49 波乱のあとで

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「ということは、二人は両想いってことよね。何の問題はないはずなのに、それなのに、恋が成就していないのは何故? フローラはどうしてプロポーズを断ったの?」 「……」  グサッと矢が心臓に刺さったような痛みを覚えました。胸中を抉っていく思い出したくもない暴言の数々。  一筋の涙が頬を伝いました。我慢していたのかもしれません。誰にも言えず相談もできなかった苦悩が溢れ出てしまったのでしょう。  絶句して急に涙を流した私に慌ててディアナが隣に座り込みました。 「ごめんなさい。泣かせるつもりはなかったのよ。責めているわけではないわ」  背中をさすりながら謝ってくれます。  分かっています。ディアナは理由を聞きたいだけ。私が勝手に泣いたのよ。彼女は悪くない。 「相応しくないと思ったの。だから、お断りしたのよ」  涙を指で拭って答えました。ハンカチで残っていた涙を優しく拭いてくれるディアナ。 「どこが相応しくないの?」 「すべてよ。何もかもが相応しくないと思ったの。レイ様に私は似合わないわ」 「そう。すべてなのね。フローラはそう思うのね」  確かめるように反芻するディアナに私はこくんと頷きました。  レイ様への気持ちと結婚は別だと思うから、承諾してはいけないと思ったのよ。  
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