49 波乱のあとで

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「そう。そんなことを。哀れね」  哀れ。  それがどんな意味合いを持つのか、私にはわからないけれど知ろうとは思いませんでした。  ロジアム侯爵家から縁談が来ていて纏まる方向で進んでいるのであれば、ビビアン様にとっても良いことなのでしょう。  ただ、レイ様への執念が怖かった。だから、今日を最後に接点がなくなればいいのにと願いました。  ようやく平静さを取り戻した頃に 「フローラに自信を持てというのは、今は酷なことなのかもしれないわね」  鼓膜に響いたディアナの声に、じっと耳を傾けました。  自信喪失している私には到底できることではありません。何をどう誇ればいいのかわからないのだから。 「フローラに必要なのはレイニーを信じること。それから、自分の気持ちを大事にすることが幸せになる近道だと思うわよ」 「レイ様を、信じること?」 「そうよ。レイニーはあなたが好きなのだから、それを信じなさい」    私はディアナを見つめて頷きました。  すべてを肯定するのは難しいけれど、信じることならできるかもしれません。  レイ様の笑顔が思い浮かんで、仄かな光が差し込んだような温かい気持ちになりました。  
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