49 波乱のあとで

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「令嬢達の自分アピールがすごかったのよ。わたくしは入学した当初は王太子妃候補の立場。数か月後には婚約発表が予定されていたけれど、まだ公表できない時期だったの。そこをつけこまれてしまったのね。令嬢達のアプローチのすごいこと。容姿を武器に迫る令嬢やお菓子やお弁当など胃袋に訴える令嬢もいれば、あたしがヒロインなのよ。あたしが未来の王太子妃よ。なんて声高に宣言する令嬢もいて、混乱を極めたの」  その時のことを思い出していらっしゃるのか、遠い目をしているアンジェラ様。 「あの、大丈夫だったのですか?」 「そうね。一時期は悩んで、王太子妃はわたくしでなくてもいいのではとか逃げ出したいって思っていたわ。王太子妃に一番近いところにいたのはわたくしだったから、いやがらせもあったし、学園では気の休まることがなかったのよ」  想像を絶する修羅場だったのかもしれません。目の色を変えて王太子殿下に迫ったり、アンジェラ様にいやがらせなんて想像もしたくないわ。 「そんな状況だったから、婚約発表の時期を繰り上げたり、学園でもなるべくわたくしのそばについてくれたりとできる限りのことを殿下はしてくれたの。令嬢の誘いもすべて断っていたわ」  カランと音を立ててアイスティーの氷が溶けて中に沈んでいき、雫がコップを伝って流れていきました。
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