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東の宮を辞した馬車の中。
流れる景色をぼんやりと目の端に見ながら、考えるのはレイ様の事。
ひとしきり泣いてしばらくたった頃、思い立ったが吉日とばかりに「西の宮に先触れを出してあげるわよ」と言ってくださいました。
さすがにこれには慌てふためき、急すぎる対応に気持ちがついて行けず辞退することに。
泣きすぎたせいで目が赤いし、腫れぼったい気がして、とてもではないけれど、お会いできる状態ではないでしょう。
「目を冷やして、少し休めば大丈夫よ」ともおっしゃったアンジェラ様の張り切りように、若干むずがゆさを覚えてしまいました。
『そうよね。善は急げというけれど、急がば回れという諺もあるわね。あちらの準備もあるでしょうし、一生に一度の事ですものね。最高のコンディションと最高のシチュエーションがベストよね。フローラちゃん、来週会えるように連絡をしておくから頑張って。体調も整えておくのよ』
私の両手を握りしめて激励してくださるアンジェラ様。
張り切りすぎではと思ったものの、そんなことを面と向かって言えるはずもなくて、喉まで出かかったそれを飲み込みました。
私のために心を砕いてお世話してくださる優しいアンジェラ様。
ところで、どうしましょう。
来週はレイ様とお会いするとか……
会ってくださるかしら? 目的が目的だけに今から胸がドキドキしてきます。
『レイニーを信じなさい』
『二人が想い合う気持ちが大事よ。自分の気持ちを大事にしてね』
『後悔しないように』
ディアナとアンジェラ様の言葉がぐるぐると心の中を駆け巡っていきました。
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