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夢を見るかの如く、近く訪れるだろう日に思いを馳せていると、馬のいななきが聞こえて、馬車が大きく揺れました。
急ブレーキをかけた馬車が止まり、とっさに手摺を掴んで床底に投げ出されたのを防ぎました。
「どうしたのかしら?」
まだ、街中。邸まではもう少し時間がかかります。いきなり止まってしまったことを不思議に思っていると、
「お嬢様。申し訳ございません」
御者のヨハンの声がして、ドアが開きました。
「どうしたの?」
「リンゴを積んだ荷車が荷崩れを起こしまして、道路に転がっているようで、拾い終えるまで今しばらくお待ちいただけますか?」
「ええ。大丈夫よ。それにしても大変ね。私も手伝おうかしら」
「いえ、いえ。お嬢様にそんなことはさせられません。ワシも手伝いますんで、お嬢様はここでお待ちください」
恐縮するヨハンにかえって足手まといになるかもと思って諦めました。人手は多い方がいいでしょうから、名案だと思ったのですけれど、残念です。
窓から外を覗くとリンゴを拾っている姿が目に入りました。
道路いっぱいに広がったリンゴたち。二人の護衛騎士も馬から下りて手伝いを始めたようです。
投げ出されたリンゴは傷んでいるのではないかしら?
廃棄されそうならこちらで買い取ってもいいかもしれないわ。加工用に回せば使い道はあるものね。
馬車の中でのんびりとそんなことを考えている時でした。
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