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「フローラ様。どこもお怪我はなかったですか?」
ダンの気遣いに忘れていた足を捻ったことを思い出しました。正気に返ると痛みまでぶり返してきます。
「足を……」
足元を見たダンがそばに転がっている靴を見つけて拾い上げてくれました。
「お送りしますので馬車にお連れします」
ズキズキと痛む足では歩くことも困難です。ダンは私を抱えると馬車まで運んでくれました。
「痛みはどうですか?」
「ちょっと捻っただけだから、痛みはあるけれど酷くはないと思うわ」
「わかりました。すぐに医者も手配いたしますので、しばらくお待ちください」
ドアを閉めたダンは気絶して転がっている男を警備隊に引き渡して話をしているようでした。
その間に御者のヨハンが顔を出してくれて、無事を確認できました。
何も出来なくて申し訳なかったと言っていたけれど、青褪めた顔で声も少し震えていたわ。目の前で争いが起こっていたのだから怖い思いをしていたでしょう。
農民に紛したならず者だったのかもしれないもの。巻き込まれず怪我もないようでよかったわ。
「お待たせいたしました。それでは、主の元へお送りしますので、ご安心ください」
「ダンも一緒に来るの? 大丈夫よ。護衛騎士もいるし、それにあなたは今日は非番でしょう? お休みの日に時間を取らせては悪いわ」
「乗り掛かった舟ですからね。それに事情を説明する者も必要でしょう。御者も動揺しているようですから、俺が代わりを務めますよ」
ダンの言う通りで、ヨハンは休ませた方がいいのかもしれません。私はダンの申し出に甘えることにしました。
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