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♢♢♢♢♢♢
何がどうしてこうなったのか……
誘拐されそうになるなんて、東の宮を出た時には思いもしなかったわ。
捻った足首を見ると腫れていてズキズキとした痛みを感じます。早く邸に帰って休みたいわ。
医者の手配とダンが言っていたけれど、もしかして先に連絡してくれているのかしら。
誘拐されそうになって怪我をしてって、両親に心配かけてしまうのは心苦しくて鬱結した思いに憂いていると、馬車が止まりました。
邸に着いたのでしょう。
馬車のドアが開いて
「ローラ」
目の前に現れた人物の顔に驚いて、一瞬、心臓が止まりました。
レイ様? えっ?
幻なのか、それとも願望が見せた夢? 何度も目を瞬かせて目を凝らして食い入るように見てしまいました。
「よかった。無事だったんだね」
泣きそうな顔をしたレイ様が私を抱きしめました。ふわりと匂うシトラスの香り。
本当にレイ様? 幻ではなくて? でもここは私の邸のはず。なのに、どうして?
思考が追いつかず、次々と浮かんでくる疑問。
「医者に待機してもらっているから、まずは診察を受けよう」
すぐに抱きかかえられた私は馬車から連れ出されました。
そこに広がっている景色は、私の邸ではなく、西の宮。
どうして? と思う間もなく部屋へと運ばれて、診察を受けていました。
♢♢♢
「捻挫ですね。骨には異常はないようですので、一週間ほど安静にして様子を見ましょう」
診察をしてくれたのはサマンサ先生。
宮の一室の診察台で診断結果を聞いた私はやっと肩の力が抜けました。一週間の療養期間はあるものの重症ではなかったようで一安心です。
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