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「残党がいてまた狙われたらどうするの? とてもじゃないけれど帰せないよ」
「でも、レイ様にご面倒かけては申し訳ないですから」
「俺の心の平安のためにもここにいてくれないか。このまま邸に帰したら、心配で心配で眠れないと思う。だから、ここにいて欲しい」
両手を包み込むように握られて懇願するレイ様に、嫌とは言えなくなりました。
あの場にいた者達は捕まったようですが、他に仲間がいたら? 今度は本当に誘拐されるかもしれない。そんな恐怖に身が竦みました。それを思えば、宮の方が安全かもしれません。
「それでは、少しの間だけ。よろしくお願いいたします」
二日か三日か、その頃には足の調子も良くなっているでしょう。そのつもりで首を縦に振り頭を下げました。
レイ様は私の返事にホッとしたのか、笑顔を見せてくれました。
「ブルーバーグ侯爵家にも連絡しているからね。ここで療養することも伝えてあるから安心して。面会もできるから」
「お心遣いありがとうございます」
もうすでに伝えてあるのね。レイ様の用意周到さに顔が引きつりそうになりました。私が反対しても無駄だったのね。
今頃、両親は誘拐のことを聞いて驚愕して気が動転しているかもしれない。また、心労をかけてしまうわ。できればすぐにでも帰って両親を安心させてあげたい。
そんなことを考えて沈んでいるところへ突然、バアーンと大きな音がしました。
そちらに注目するとアンジェラ様が部屋に駆け込んでくるところでした。
「フローラちゃんは大丈夫なの?」
肩で息をしている様子から、誘拐の件を聞いて大急ぎで駆けつけて下さったのでしょう。
東の宮まで伝わってしまっているのね。心配の種を増やしてしまったようで、申し訳ないわ。
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