49 波乱のあとで

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「おかげさまで、警備隊やダンが助けてくれたので大事に至らずにすみました」 「よかったわ。怪我をしたと聞いたけれど具合はどうなの?」 「軽い捻挫だったみたいで、一週間ほど安静にしていればよくなるそうです」  ベッドのそばに用意された椅子に座り、元気そうな私の顔を見たアンジェラ様から安堵の息が漏れました。 「そうなのね。軽く済んでよかったわね。でも、無理はしないでね。しっかり治療は受けてね」 「はい。お心遣い頂きありがとうございます」  私達のやり取りを見ていたレイ様は 「義姉上。いきなり部屋に入ってくるなんて、何事かとびっくりするではないですか?」  困った顔でこめかみを指で押さえてぼやきました。 「あら、ごめんなさい。だって、フローラちゃんが誘拐されそうだったって聞いたら、居ても立っても居られなくなって、飛び出してきてしまったのよ」 「気持ちはわかりますが」 「でしょう? だから、今回は許してちょうだいね」 「しょうがない。今回だけですよ」 「わかったわ。今度から気をつけるわね」  先触れなしの訪れとノックもなしの部屋への訪問は本来ならマナー違反ですものね。  やんわりと諭すレイ様と非礼を反省するアンジェラ様。  王族同士の会話が、どことなくほのぼのしたものに感じられて、口元が綻びました。
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