49 波乱のあとで

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「それはそうと、どうしてフローラちゃんが狙われたの?」 「逮捕された者達を取り調べてみないことには、真相はわからないのではと思いますが」 「そうね。そうよね。フローラちゃんは何か心当たりはあるの? 気になった点とかないかしら?」 「義姉上。事情聴取はあなたの仕事ではありませんよ。それに今日の今日。当事者のローラに負担をかけることはおやめください」  レイ様がアンジェラ様を諫めてくださいました。  近いうちに私にも事情を聴かれることは承知していましたが、まだ心の整理がつかない状態なので、気遣ってくださるのはありがたいことです。 「フローラちゃん、ごめんなさいね。ちょっと焦っていたようだわ。実はわたくし、とってもはらわたが煮えくり返っているのよ」  にこやかな表情で物騒な事を言い放つアンジェラ様。  これをどう受け止めたらいいのか、唖然とした表情で見つめるしかありません。レイ様も瞠目してアンジェラ様を凝視していました。 「だって、そうでしょう? 王都で貴族令嬢の誘拐未遂事件が起きたのよ。今回は未遂で終わったからよかったものの、これは見過ごすわけにはいかないわ。王太子妃の名にかけて許すわけにはいかない。二度とこんな事件が起きないように徹底的に調査をするわ」  固く誓うようにギュッと扇子を握りしめたアンジェラ様。  正義感を滾らせ義憤に燃えるアンジェラ様は美しい。  思わず見惚れてしまったほど。  艶麗な美しさと凛乎(りんこ)とした姿に目を奪われて、不謹慎にも胸がときめいてしまったことは……レイ様には内緒です。
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