49 波乱のあとで

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♢♢♢♢♢♢ 「ローラ、疲れたんじゃない?」  両親が帰った後、しばらく放心状態だったからでしょうか。少し気が抜けてしまっていました。 「大丈夫ですよ」    心配させまいと微笑んでみたのですが 「うーん。顔色があまりよくないよ。しばらくの間だけでも横になった方がいい」  そういって、私を抱きかかえてベッドへと運んでくれました。布団の中におさまると体が温まって心地よくなってきました。  ベッドに腰かけて私を見つめるレイ様の情愛のこもった瞳に胸がいっぱいになります。  二人だけの部屋。  レイ様は私の髪を梳いて頬にそっと手を触れました。 「ゆっくりお休み」  離れそうになる手に思わず自分の手を重ねました。レイ様の触れた手がピクッと震えて顔も微かに赤みがさしたように感じました。 「レイ様」  絡む視線に熱を感じて早くなる鼓動。二人の息遣いだけが聞こえる部屋。 「ローラ。怪我が治ったら、もう一度だけチャンスをくれないか?」  チャンス?  「あの日のやり直しをしたいんだ。その時にローラの気持ちを改めて聞かせてほしい」 「……はい」  レイ様の申し出に動揺した気持ちを何とか押さえ込んで返事をしましたが、心の中は動揺しまくりです。でも、よく考えると私もチャンスをもらったのかもしれません。  素直に正直に気持ちを伝えるチャンスを。 「ローラ、お休み」  レイ様の手が離れていくのが名残惜しくて、ずっと離してほしくなかったけれど。  今頃、睡魔が襲ってきたよう。瞼がとろんとしてきました。気丈にしていたけれど疲れていたのかもしれません。  最後に頭を撫でたレイ様に微笑みを返して、ぼんやりとした視界で背中を見送りました。それから、私は深い眠りへと落ちていきました。
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