49 波乱のあとで

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「もう。レイ様、ずるいです」  そんな顔をされると拒否できないわ。 「まだ、完治していないのだから当然のことだよ。さあ、行こう」  抵抗してみたけれどそういわれると何も言えなくて、結局、レイ様に体を預けて抱きかかえられた私。  お姫様抱っこで運ばれてきた私を見たディアナ。 「あいかわらず仲がいいわね」  からかうような声と生暖かくニヨニヨした表情で迎えてくれたディアナを前にして、顔が真っ赤になってしまったのはいうまでもありません。 ♢♢♢♢♢♢ 「腫れもなく痛みもないようですね」  足首の様子を診た先生にはいと返事をしました。 「これからは普通の日常生活に戻っても大丈夫ですよ」  先生のお墨付きをもらって心が軽くなりました。  痛めた足首に負荷をかけないように少しずつ歩行練習もしていたけれど、ようやくいつも通りに生活できるのね。よかったわ。 「でも、治ったからと言って無茶なことは禁物ですよ。お転婆なことはなさらないように」  よっぽど浮かれた顔をしていたのかしら。  釘をさすことを忘れない先生。  お転婆な事って、もしかして、木登りの事かしら?   先生に初めて会った日のことを思い出してしまったわ。 「もう。先生、子供ではないのですから、ちゃんとわかっていますよ」  拗ねてほっぺを膨らませる私に 「それは、失礼いたしました」  ぺこりと頭を下げる先生。顔を見合わせた途端に室内に響く笑い声。  お茶の準備をしていたエルザ達の顔もにこやかです。  久しぶりに皆が明るくなったようで、私の心も晴れやかになっていきました。
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