49 波乱のあとで

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「サムシューズはフローラ様とシャロン様。治療院は侯爵様。本当にお世話になりっぱなしで、ブルーバーグ侯爵家に足を向けて眠れません。感謝してもしきれないくらいです」  先生は深々と頭を下げました。 「それは先生のお人柄だと思います。両親も先生だからこそ協力しているのでしょう。私もですけれど。先生の夢の実現に微力ながらでもお力になれたのなら、こんな嬉しいことはありません」  頭を下げたままの先生の表情はわかりませんが、肩が震えていました。 「これからも先生のお役に立てるように協力しますから、なんでもおっしゃってくださいね」 「なんて、もったいないお言葉を……」  顔を上げた先生の目には涙が光っていました。 ♢♢♢♢♢   先生の診察とお茶の時間が終わってしばらくたった頃、レイ様が姿を見せました。  執務の合間に顔を見せてくれるレイ様ですが、ちょっとそわそわしていらっしゃるよう。 「ローラ。どうだった?」  空いていたソファに座ったレイ様は診断結果が気になるのでしょう。 「腫れもなく痛みもありませんので、日常生活に戻って大丈夫だと言われました」 「そうか、よかった」  安堵の息をついて微笑みを浮かべたレイ様に私の顔も綻びます。 「少し散歩しない?」 「はい。時間は大丈夫ですか?」 「気分転換。それにローラ不足だし、ねっ」  そういって片目を瞑ってみせるレイ様にドキッとしました。 「それに……」  意味深に口を閉ざしたレイ様にさらに心臓の鼓動が速まります。  先にある出来事を思うと躊躇する気持ちも生まれましたが、差し出された手を取り立ち上がると庭園へと足を運びました。   
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