49 波乱のあとで

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 レイ様に手を引かれて庭園にやってくると深緑の葉が茂り白い花やピンクの花を咲かせている樹木の下を通っていきました。 「あまり上ばかり見ていると転ぶよ」  今が盛りとばかりに咲き誇る花が綺麗でつい見惚れていました。あまりにも綺麗であちらこちらと目移りしながら眺めている私にクスクス笑って注意するレイ様。 「大丈夫です。ちゃんと足元にも気をつけていますよ」  子供ではないわと口を尖らせて返したのも束の間、何かに躓いてしまいました。 「キャッ」 「危ない」  体が傾いでバランスを崩してしまった私をレイ様が抱き留めてくださいました。一大事にならなくて、お互いにホッと胸を撫で下ろします。レイ様の吐息が温かい。 「良かった。でも、注意したそばから転ぶなんてローラはそそっかしいな」 「申し訳ありません」  本当にその通りで何も言えないわ。私ってドジなのね。  しゅんとレイ様の腕の中で萎れていると 「ローラのそんなところも可愛いからね」  スラっと言われた甘い言葉にボッと火が付いたように顔が真っ赤になりました。 「あ、あの……」  可愛いなんて、言われなれない単語にアワアワする私の様子がおかしいのか、レイ様がクスとした笑いが落ちてきました。  腕の力を抜いたレイ様の視線が私におりてきます。目が合うと花が綻ぶような笑顔になったレイ様。
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