49 波乱のあとで

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「うん。ちょっとあたふたするところも可愛い」 「レイ様。それは……褒められているのでしょうか?」  可愛いと言われるのは嬉しいけれど、なんとなく子供扱いされているような気がしなくもないのですが。 「もちろん。ローラの存在自体が可愛いからね。ちゃんと一人の女性として見ているよ」 「……」  愛おし気な眼差しを向けるレイ様になんと答えればいいのか分からなくて、胸がいっぱいになってレイ様の胸に顔をうずめました。ゆっくりと何度も髪を撫でる手に心が落ち着いていきました。  手をつないで、一歩一歩踏みしめるように歩いていく庭園の中。  何度も散策し見慣れている風景なのに、いつもより輝いて見えるのは、新鮮に目に映るのは何故なのでしょう。  行きついたのは四阿。何度となく休憩やお茶や食事をした場所。  椅子に座ると緊張してドキドキしてきました。  隣にいるレイ様の顔がまともに見れなくて、目の前の景色に視線を移して気を紛らわせます。  爽やかな川のせせらぎの音。耳を澄ませば鳥の鳴き声も聞こえるわ。空も雲一つない碧空。太陽が木々の間から私達を照らしています。 「ローラ」  膝に置いた手にそっと重ねられた手にドキッと心臓が跳ねました。
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