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「改めて返事を聞かせてほしい」
レイ様の覚悟を決めたような真剣で緊張を含んだ声音。
張り詰めた空気に動悸がして浅い呼吸を繰り返す私に降り注ぐのはレイ様の慈しむような眼差し。一つ、大きく深呼吸して頷きました。
レイ様は席を立ち私の前に跪きました。
そして右手を取って私を見つめます。
「フローラ・ブルーバーグ侯爵令嬢。私レイニー・グリセアはあなたのことを愛しています。いついかなる時でもあなたを愛し大切にし、一生添い遂げることを誓います。どうか私と結婚してください」
「はい。私もレイニー殿下を愛しています。私も一生殿下のおそばにいることをお誓いいたします」
真摯な態度の中に恋情がこもる瞳に魅せられて、一言、一言嚙みしめるように言葉を紡ぐと胸が高鳴ってじんわりと目頭が熱くなってきました。
右手の甲にキスを落とすと感無量といった体で私を見上げたレイ様の目が潤んでいるように見えます。
触れた手の甲から熱が広がっていき、私を見つめるレイ様の顔が涙で滲んでよく見えなくて霞んでいきました。
シトラスの香りと共にふんわりと腕の中に閉じ込められると目に溜まった涙が頬を伝います。
「ローラ。ありがとう。これからもずっと大事にするから、覚悟しておいて」
「……はい」
覚悟とは……一瞬考えたもののそれもすぐに掻き消えてしまいました。それは、今までに見たことがなかったレイ様の顔を見てしまったから。
この日のレイ様の幸福に満ちた笑顔を私は一生忘れることはないでしょう。
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