50 ビビアンside⑤

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50 ビビアンside⑤

 憂鬱な朝。  毎日が憂鬱だわ。三男との婚約の日が迫っている。  逃れられない運命を呪いながら毎日を過ごすわたくし。無理やり笑顔を作り幸せそうな顔で学園での日々を過ごすのにも疲れてしまった。  馬車から降りると学園の建物が見える。重い足取りで歩いていくと生徒達のざわめきが耳に入ってきた。 「あれは、もしや……」 「すごい。あの馬車って、もしかして」  口々に上がる驚愕の声に振り向くと一台の馬車が止まったところだった。  護衛騎士が六人ほど周りに配置されている。どんな要人が乗っているのかわからないけれど、警戒心の塊で物々しい雰囲気が漂っていた。  二頭立ての黒塗りに金の装飾がふんだんに施された上品で豪奢な馬車。何よりも目を引いたのはそこに印された王家の紋章。    王族の馬車だと認めたとたんにざわざわとざわめく群衆達。  その馬車から誰が降りてくるのだろうと興味津々に見つめる中、御者が恭しく扉を開けた。  シンと静かになった空間。  扉から姿を現したのは、レイニー殿下だった。
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