3366人が本棚に入れています
本棚に追加
「キャー」
悲鳴にも似た黄色い声が辺りに響き渡る。彼の美貌に女子生徒達が浮足立ち彼の姿にうっとりと見惚れている。
久しぶりに見るレイニー殿下の姿。
その麗しき容姿や立ち姿に釘付けになりながら、もしかしたら、わたくしを迎えに来てくださったのかしらと一縷の望みに縋る。
ありえないと頭の片隅ではわかっていても、まだ諦めきれていない自分がいる。
だって、わたくしの方がフローラよりも数倍相応しいと思うもの。
このまま、あんな三男との縁談なんて蹴散らして、わたくしを連れ去って下さらないかしら。
話を聞きつけて、そのために来てくださったのかもしれないわ。
次から次へと差し込む希望の光。
けれど、そんな望みも一瞬にして打ち砕かれた。
レイニー殿下が馬車の方を向き直って手を差し伸べる。誰かが中にいる。一人ではないと悟った時に殿下の手を取り中から出てきたのは、フローラだった。
「きゃあ」
今度は黄色い歓声が上がる。
レイニー殿下のエスコートで地に降り立つフローラは堂々としていた。
殿下と向き合うと恥じらうような仕草を見せる様は二人の親密な関係を物語るようで、群衆達には微笑ましく映るかもしれない。
居合わせた生徒達は二人の様子に眼福とばかりに憧れの眼差しで見守っている。
最初のコメントを投稿しよう!