50 ビビアンside⑤

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 それにしても、愛想がなかったわ。あの三男。  婚約式を思い出す。  両家揃った席でにこりともしない顔。怒っているようには見えなかったけれど、無という表情。わたくしは笑顔を張り付けて愛想よくしていたのに。  あちらの両親がわたくしを見て感涙感激してくれたことは良しとしても、三男は眉一つ動かさなかったわ。平伏さんばかりにしていた両親とは大違い。  二人きりにさせられてお茶をするも話は弾まず続かず、わたくしと目が合うこともほとんどなく終わってしまった。  こんな調子で結婚してから上手くいくのかしら? 『きっと、照れてらっしゃるのよ。これから徐々にお互いを知っていけばいいわ。わたくしもそうだったわよ』  なんて、お母様は軽く言うけれど、それはお互いに好意を持っていればこそだと思うわ。とてもじゃないけれど、好意を持たれてるなんて思えなかったもの。わたくしもそうだけれど。確かに実物も美丈夫な人で容姿はよかった。ただそれだけ。  そんな相手に結婚して上手くいくなんて楽観はできない。でも、歩み寄らないといけないのよね。  これがレイニー殿下だったらと思ってしまう。  そうであれば、一も二もなく自分磨きに精を出すのに。詮無い事を思い、また一つ溜息を零した。
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