50 ビビアンside⑤

7/29
前へ
/774ページ
次へ
 フローラの姿を思い出す。  毎日レイニー殿下の送り迎えで学園に来るフローラ。  平凡だと思っていたフローラが美しく見えてしまうようになった。  婚約が公にされたことで自信がついたのか、気品も身につけて輝いているように感じる。  外見を磨くだけでは得ることのできない幸せオーラ。体の内から光り輝いているようなキラキラと眩しい光を放っている。  二人の愛の深さを見せつけられているようで、悔しくて妬ましくて嫉妬で狂いそうになる自分を必死に抑えるしかない。  こんな醜いわたくしの気持ちも時間がたてば消えていくかしら。  そんなことを考えて感傷に浸っていると、コンコンとドアを叩く音がして 「お嬢様、よろしいでしょうか」  執事のヨハンの声がした。  珍しい。ヨハンはお父様付きだから、わたくしの部屋には滅多に訪れないのに。  顔を出したヨハンが告げる。 「お嬢様、旦那様よりエマと一緒に、至急一階の応接室へ来るようにとのことでございます」 「エマも?」 「はい。お客様がいらっしゃっております。それから、華美な服装ではなく、控え目な服装でお願いいたします」  神妙な面持ちで簡潔に告げたヨハンは頭を下げて部屋を去って行った。取り付く島もなく残されたわたくしとエマ。  お客様って誰なのかしら? 控え目な服装?   肝心なことは伝えられず、疑問符が浮かんだけれど、ボーとしてはいられない。とにかく支度し直さなければ。  何が何だかわからないまま、わたくしたちは応接室に向かった。  
/774ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3368人が本棚に入れています
本棚に追加