50 ビビアンside⑤

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 比較的飾りの少ないラベンダー色のドレスに着替えて、イヤリングもネックレスもシンプルなものへと変更した。  それだけでもいつもよりはおとなしめの装いになったでしょう。  扇子を手にして二人して廊下を歩いて行った。  応接室まで来ると黒地に金の刺繍が入った騎士服に身を包んだ騎士が二人立っていた。高貴なお方の訪問なのかと思うくらいに厳重な警備。  もしかしてそうなのかしら?  もしやと思い、騎士達の精悍な出で立ちに目を奪われたものの、高揚感のない空気に妙な胸騒ぎを覚える。  後ろからついてきたエマは怯えているのか視線を落として身を縮めていた。  来客時に主人と同じように呼ばれることはないから、エマも委縮しているのかもしれない。 「心配しなくても大丈夫よ。わたくしがいるわ」  励ますように表情をなくしたエマに話しかけた。彼女は顔を上げて微かに笑みを浮かべて頷いてくれたけれど、顔色が悪かった。緊張しすぎているのかもしれないわね。  それにしても、何故、エマも呼ばれたのかしら?    その疑問の答えは扉の先にあるのでしょう。  息を整えて姿勢を正して名を告げると騎士が扉を開けてくれた。 「ビビアン及びエマ、お呼びによりただいま参りました。遅くなりまして申し訳ございません」  扉が閉まるとカーテシーをして挨拶をする。 「ビビアン。椅子に座りなさい」  お父様の声に顔を上げると目に映ったのは、扉の前にいた騎士達と同じ服装をした騎士が三人。年上の一人が前に立ち、若い二人は後ろに控えている。直立不動でわたくしたちを見ていた。  精悍な中にも清廉で厳格さを纏った騎士達の他には誰もいない。テーブルについているのは両親だけ。  来客とはいったい?    言われた通りに座るとエマはわたくしの後ろについた。
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