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「エマが気になるのか?」
「はい。エマは帰ってきているのでしょう? できれば先に会わせていただけないでしょうか?」
「エマか……」
小さく息を吐いたお父様はあごに手をやり考えていた。
お楽しみはあとにというつもりだったのかしら? お父様の計画を台無しにしてしまったのかもしれないわ。余計なことを口走ってしまって、申し訳ないことをしたのかも。
「落ち着かないようだからな。先に結論から言った方がよいか?」
「はい」
わたくしの意見を聞き入れて下さった。
エマは無実だったとお父様の口からハッキリ聞かないと落ち着かないものね。それから、ゆっくりと話をしたいわ。
わたくしは期待を胸にお父様の言葉を待った。
「エマは帰ってこない。永久に帰ってこないだろう」
「え、それは、どういう……」
「エマは、黒だった」
「……」
「犯行を認めたよ。盗賊達に誘拐を依頼したとエマが自供した」
黒? 犯行を自供って……うそ。うそよね。
「エマが、そんな、何かの間違いですわ。彼女がそんな誘拐なんて、犯罪にかかわるなど考えられません。お父様、エマは心優しい人なのよ」
「わしだって信じたくはない。しかし……。エマはそなたの言う通りの人柄なのだろう。その心優しいメイドが犯罪を犯す。その原因は何だったのか。ビビアン、そなたに色々と聞きたいことがある」
お父様の冷淡で地を這うような低い声がわたくしの鼓膜に響いた。
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