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「初耳だったのでな。天地がひっくり返るほど驚いたのだが、わしたちが知らないだけだったのか?」
「あ、あ……」
気が動転してしまって言葉が出て来ない。
まさか……エマが、そんなことを言ったの?
「どうなんだ?」
「そ、それは……」
「殿下とはガーデンパーティーで出会ったとも聞いた」
「……」
「どうなのだ」
「い、いえ、それは……ちょっとした夢で……」
どう答えればいいの? もしかして、エマに話して聞かせた物語がすべてばれてしまっているの?
ガタガタと体が震える。血の気を失った指先が冷たくなっていった。
「夢? 夢の話なのか?」
お父様の顔が厳しくなっていく。お母様の悲し気な表情が目に映った。
「あ、あの……悪気はなくて、ちょっと、夢の話をしただけで……」
「夢の話をか……それをエマが信じたのか?」
言い逃れは許さないとばかりにお父様の声が鋭くなった。
なぜ、こんなことになってしまったの。あれは、夢物語。わたくしとエマだけの架空のお話だったのに。
「レイニー殿下から指輪も贈られたそうだな。結婚の約束もしていたとか? 初耳ばかりで驚いたが、殿下はそんな事実などないと断言されたのだが、どれが本当なのだろうな。ビビアンの口から真実を聞きたい」
詰問にガタガタと震えが止まらない。
「ご、ごめん、なさい」
やっと、それだけ口にできた。お父様は額に手をやると大きく嘆息した。失望の色が見える。わたくしは両親の期待を裏切ってしまったのだとようやく理解した。
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