50 ビビアンside⑤

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「はい」  背中を丸めて小さく返事を返した。  気持ちが高揚していたとはいえ、よくこんな嘘がつけたものだと自分でも感心してしまう。少しでも現実から目を逸らしたくて、妄想の世界に入り込んでしまった。 「わしもな、エマの供述を聞き、レイニー殿下から、一つ一つ否定の言葉が出るたびに、顔から火が出そうなくらい恥ずかしかった。我が娘がこれほどまで嘘をついていたことがな。それを何の疑いもなくメイドが信じる構図が空恐ろしくなったよ」 「……」 「ガーデンパーティーや西の宮での件もお相手はフローラ嬢だったと聞いた。結婚の件はようやくフローラ嬢に承諾してもらえたのだと殿下は嬉しそうに話して下さった。それと指輪の件は身に覚えのないことだとね。よくもまあ、恥知らずなことが言えたものだな。ありもしない嘘で塗り固めて、そなたは何もかも自分にすり替えてエマを信じ込ませていたのだな」 「信じ込ませるって、そんなつもりはありませんでしたわ。ただ、夢の世界に浸っていただけで、そうでもしなければわたくしの心が壊れそうだったのです。それに、エマには口外しないように言っておりました」 「だから、自分は悪くないと言い訳をするのか?」 「そういうわけでは……」  何をどういえば理解してくれるの?  「夢の世界に浸るか、物は言いようだな。そんなものは自分の勝手だが、他人を巻き込むときに真実を教えなかったのはどうしてなんだ。そなたが嘘だと自分が作り出した世界だと何故教えなかった」 「それは、だって、わたくしとエマの秘密だったからですわ。レイニー殿下の事は諦めていましたし、わたくしの結婚が決まった時点で終わったのです。彼女だってそれをわかっていたはずですわ」  必死に訴えるけれど、お父様の目は冷たくなってゆくばかり。
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