50 ビビアンside⑤

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「泣いてもどうにもならん。泣きたいのはわしたちの方だ。エマは盗賊達にフローラ嬢を誘拐させ行方不明になれば元々恋仲だったそなたとレイニー殿下が結婚できるだろうと計画したそうだ。それが今回の誘拐未遂事件の真相のようだな。それこそ未遂ですんでよかったが、だからと言って罪が軽くなるわけではない」 「そんな……わたくしの結婚……のために……」  エマがそんなバカげた計画を立てるなんて。わたくしは何も知らなかった。そんな素振り一つなかったわ。相談してくれたら、止めさせたのに。なんて浅はかなの。 「ああ。そなたの嘘を信じた健気で心優しいメイドがやったことだ。せめて、メイドの私怨であれば解雇ですんだのだがな。主人の狂言が原因で犯行に及んだとなれば、悪質であるとみなされるだろう。わしらとて無傷ではいられないだろう。何らかの処罰が下されるはずだ」 「……わたくしは何もしていないわ。嘘をついたことは悪かったと思っております。けれど、エマに誘拐しろだとか一言も言っていないわ。お父様、信じてくださいませ」  わたくしは両手で顔を覆うと泣きだした。
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