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隠された狂気といつかの御伽噺
・・・何か聞こえる。
ぴちゃ…ぴちゃ、と何かを弄るような少し粘り気のある水のようで何かを弄るような音。
なぜだか嫌な予感がした。
そう思いつつも音のする方へと歩いて行く。
・・・ぼくの教室からきこえるようだ。
嫌な汗が背中を伝う。
息を殺しながら教室を覗くと人だった肉片がそこら中に散らばり、
その地獄のような惨劇の中心には真っ赤に染まった誰かがいた。
こちらをゆっくりと振り向く。
・・・最悪だ。
何かの間違いだと言ってくれ…
一生覚めることのない悪夢だと言われた方がまだマシだった。
こちらを振り返った人物は僕の最初で最後であろう大切な友達…。
今まで見たこともない美しい笑顔を浮かべる星川 翠だったのだ。
彼は、世界で一番幸せだとでもいうように涙を流しながらあの綺麗な顔で微笑んでいた。
・・・なぜ僕の嫌な予感はいつも当たってしまうんだ。
・・・もし、何らかの方法で過去に戻れるとしたらいつに戻る?
いつに戻り、何を変えたい?
いつか、こんな御伽噺を聞いたことがある。
『潮が満ちた満月の夜に、
海に堕ちた流れ星の星屑だけを食べ続けた光るクラゲがいるんだって。
そのクラゲを見つけると何かと引き換えに願いを叶えてくれるらしいよ』
もし、本当に
願いを叶えてくれるというのなら…
次こそは狂気と憎悪が繰り返すこの最悪の世界から君を助け出すと誓うよ。
・・・たとえ何を犠牲にしたとしても。
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