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No.1
「今どこにいますか!?」
威厳のある男性の声でジャッジャンと始まった。
「さて、生放送でお届けする行方不明者捜索番組『今どこにいますか?』 今月も始まりました。放送開始から70回目になりました。もう秋本番ですね。皆様、お元気でしょうか? 司会のメグミ敏年です。よろしくお願いいたします」
国民的に人気がある司会者の優しくてハリのある声だ。
「アシスタントのYuiでーす。よろしくお願いいたしまーす」
こちらの声は甘く鼻にかかった若い女の子の声。聞くたびに耳がムズムズする。
「Yuiさん、それでは本日の1人目の情報をお願いします」
「はーい、わっかりましたー。本日のお1人目は男性でーす。お名前は……」
この番組は毎月、最終の日曜日に放送される。
わたしはこの番組を聞きながら自宅アパートで夕食をとることに決めている。おざなりに食事をすると食べ物に失礼なので音声だけを楽しむ。
ゆでブロッコリー、豚の生姜焼き、もやしと油揚げの味噌汁、市販の浅漬け、炊き立てご飯をテーブルの上に並べ「いただきます」と軽く両手を合わせ食べ始めた。
肥満を防ぐために一口、30回以上は噛んでから呑み込む。体重の増加は禁物だ。
「それでは3人目のご紹介でーす」
番組アシスタントのYuiは天然系で、重苦しい番組の雰囲気を明るくして、司会のメグミ敏年との相性もバッチリだ。
「3人目はこの子! ジャーン!! 山田ヨーコさんでーす!」
「あっ」
わたしは口に運ぼうとしていたブロッコリーを味噌汁に取り落とした。味噌汁は跳ね出てシャツの胸元とテーブルを汚す。
食事の手を止め、視線を食べ物からテレビ画面に移した。
Yuiが少女の写真を画面いっぱいに映るように押し出している。
「山田ヨーコさんのお姉さまがスタジオにいらしています。お姉さま、こちらにどうぞ」
メグミ敏年がスタジオ隅に呼びかけると、紺色のワンピース姿の瘦せすぎの和風美人が画面中央に向かって歩み出た。
「ヨーコさんのお姉さまのサユリさんです。ヨーコさんに呼びかけをお願い致します。時間は限られていますので力の限り思いを伝えてくださいね」
サユリは頷いた。
「ヨーコちゃん、今どこにいるの? 私もコウスケさんも心配しています。これを見ていたら電話してください。本当に連絡して、おねがい!」
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