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誠は店に〈本日休業〉の札をかけ、ゆかりを、この瀬戸内海に浮かぶ島につれてきたのだった。
「たださ。こんな状態のお前を放っておくわけには行かねーから、オレの代わりは呼んどいた」
微かに着信音。
尻ポケットからスマホを取り出してメッセージを確認した誠の唇がキュッと弧を描く。
「えっ、いいよ。一人で……。私だっていい大人だか……ら」
と言っているゆかりを無視して部屋のドアの方へ行ってしまう誠の背中を追いかけたゆかりの瞳が大きく開かれた。
「……え?……」
——そこに立っているのは。
開いたドアの向こうを食い入るように見つめるゆかりに、誠は、ふ……と笑みをこぼし部屋の外に踏み出す。
目があった。
「ダリにまた来い。オレのコーヒー飲ませてやる」
(背だけはオレの方が高いからな)と見下ろして、彼の胸に人差し指を突きつける。
「オレに謝るな。謝る相手はあっちだろ」
人差し指をゆっくりと動かしてゆかりの方に向けると、
「……あぁ」
ようやく〈彼〉が掠れた声で返事した。
*
——〈罪〉が追いかけてきたのかと思った。
こちらに向かって手のひらをむけて振った誠がドアを閉める。
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