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 ゆめみごこちでゆかりはバッグを探ってスマホを取り出した。  着信の表示は咲良。今まで気づいても無視したままにしていた、歳下の……友人、と言ったら彼女は気を悪くしないだろうか?  画面をタップして耳に当てると、 『久しぶり。ようやく出でくれた! 色々話したいし、聞きたいけど、まずは話してもらいたい相手がいるんだ。今、変わるねっ』 と、聞き慣れた彼女の声。  しばらくすると、大きく目を見開いたゆかりがスマホを耳から離した。視線が、目の前にいる〈彼〉と手にしたスマホの間を忙しなく行き来する。 『聞こえてる? ゆかりさん?』  スピーカーから漏れてくるその声は、目の前の人物のそれとひどく似ていて……。 ——でも、今なら別人とわかる。 「あ。あの。ごめんなさい、ちゃんと聞いてます」 『また、落ち着いたらゆっくり会いましょう。今度は、逃げないで。咲良はあなたと会うのを楽しみにしているんだから……』  通話を終えると、腕を掴まれた。 「ね、早く。俺の名前を呼んで」 と、せがむくせに、ゆかりが口を開くとキスしてくるから、ゆかりはなかなか〈彼〉の願いを叶えられない。  貪り合うようなキスから、ちゅ、ちゅ。何度か触れ合うだけのものに変わって。  ようやく離れた唇で、 「なおと、さん」 と紡いでみる。  実際にその名を口に出して言うのはいつぶりだろうか……。 「尚人さん」  頷いてくれた。 「尚人さん、尚人さん、尚人さん」  何度も繰り返す。  頷き返してくれる。 「ほんとに。本当なんですね……!」
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