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エンディング
ウエディングプランナーの小杉はその日何度かのため息を心の中でついていた。
白いドレスを着てそれをお披露目する日は女にとって人生で一番、自惚れてもいい日のはずなのに、と……。
コンコンと控室のドアがノックされた。
薄く開かれた間から、新郎の顔が覗く。
「あぁ! 月島様。奥様をどうにかしてください。お綺麗ですよと何度も申し上げているのに、全然納得してくださらなくて」
ガチャリとドアが開き、新郎が部屋に入ってきた。
鏡の前で座る新婦の後ろに立ち腕組みしてじっと見つめる。
小杉からしたら、「さぁ! どうだ!」と言ってやりたい仕上がりだ。
この数年で、ここまで小杉が入れ込んで仕上げた花嫁はいない。
自信はあるけれど、新郎の評価が気になって息を呑んだ。
「……予想外だ」
と呟かれた彼の言葉に、どきん! と冷や汗が噴き出る。
「予想外すぎる。なんて綺麗なんだ。いつも綺麗だと思っているけれど、特に今日は素晴らしい。あぁ、今すぐ食べたいくらいだ……ありがとう。小杉さん」
満面の笑みの新郎に、両手を握られる。
小杉はほっとして、気を失うかと思った。新郎の言った、食べたいくらい云々は聞き流しておこう……。
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