エンディング

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 *  式の後、ゆかりたちは式を挙げたホテルにそのまま泊まることにしていた。  ふたりの大切な思い出の日の締めくくりとして……。   このホテルで挙式したカップルだけが泊まれるという特別なスイートルーム。ホテルの最上階から見下ろす夜景は、ここのホテルの呼び物のひとつというだけあって、真っ黒なビロードの上にキラ砂を撒いたように美しい。 今、窓からその景色を見下ろすゆかりには、結婚式の興奮がまだ体の奥に残っているように感じられる。  火照る体を持て余して分厚いガラス窓に額をくっつけていると、隣に人が立つ気配がした。 「式を挙げてよかっただろ?」  尚人だ。  クスクス笑いまじりで聞いてくる。 (ほら、取り越し苦労だっただろ)と言いたいのだ。 ゆかりは直前まで式を挙げることに消極的だったから……。 ゆかりは素直にうなずいた。 「はい。お義母さん、泣いてましたね」 「ふ……、うちの母親だけじゃない」 「そうでした」  ゆかりは今日来てくれた人たちの顔を思い起こした。……ほとんどが泣くか笑うかどちらかの表情、あたたかないい結婚式ができて良かったと思う。 「久乃さん、すっごく、泣いてましたね」 「泣きすぎてハンカチをずうっと顔に足当てているから、帰る時なんて転ばないか俺はヒヤヒヤしたよ」 「誠さんが久乃さんのこと……手を握ってくれていたので、私は安心してましたよ」 「誠には色々世話になってるよな」 「本当に。足を向けて寝れません」  ダリの元オーナーである久乃は、尚人とさやかの関わりについてもよく知っている。その後の尚人とゆかりのことについても……。 だからこそ、感激もひとしおだったようだ。 まぁ、それは他に、小夜子、一美なども同様で、みんな尚人が帰ってきたことに驚き喜び、そして祝福してくれた。 ぐず……と鼻を啜り上げたゆかりの肩に手を置いて、 「どうした?」 と尚人が優しく顔を覗き込んでくる。 「……わ、私、今になってわかりました。みんなにいっぱい心配かけてた。心配してもらえていたんだって」 「咲良さん達もきてくれて。よかったな」
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