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 テレビの天気予報を見るときでさえ、この地域だけは目に入ってこない、というのはもはや特技の域に達していたというのに。  それがこんなにもあっけなく、 (来てしまった……) のである。  新幹線から降り、周りの人の波の動くまま改札を出て駅構内の大きな柱のところでゆかりは一旦立ち止まった。  四角形のどっしりとしたその柱の四面に人待ち顔で立つ人々が……若い女の子だったり、スーツ姿の一団だったりが張り付いて立っている。  駅のロータリーに迎えの車が来ると言われている。  とりあえずの着替えだけ突っ込んできたボストンバッグを右手に、使い慣れたお気に入りのハンドバッグを左手に、キョロキョロしてみた。  出入り口は両サイドにある。  自分の右側にある出口か、左側の方から出るのが正解かよくわからない。  左の出口を選んだのはこっちの方が近くだったからだ。  間違っていれば引き返せばいい。  駅の外へ足を踏み出そうとして、ゆかりはふと、足元を見た。  今ここにいる自分を確認しようとしたのだった。なんだか頭の中がふわふわしていて……いや、頭の中だけじゃなく、自分の足が地をついているか不安になる。実際、新幹線の中でも降りてからも何度も足元を確認していた。  ここにくるまで、心配していた。  到着と同時に感情が爆発して他人がいるのも構わずその場で泣いてしまうのではないかと。  そんなことにはならなかった。  自分の心が凪いでいることに寂しさを感じる。  外に出ると春らしいプラスチックの透明な板みたいなペラペラとした光が一瞬だけゆかりの視界を奪う。
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