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 やがて車の両側を木々の緑が縁取り始め、(あぁ、山の方に行ってるんだ)と思っていると、走る車体の下、地面の感覚がアスファルトから小砂利の上を行くような感覚に変わり。 着いたのはびっくりするほど大きくて、立派なお屋敷だった。 周りに生い茂る緑を突き破って空を目指しているような三角屋根が印象的だ。  分厚いドアが開けられて、もうそこでゆかりは面食らってしまった。 三和土には真っ赤で分厚い絨毯が敷き詰められていた。これを土足で踏んでいいのかとその場で固まっているゆかりの横を、桜亮と名乗った彼はズンズンと遠慮のない動作で入って行き、上り框のところで一旦止まると、 「おぉい、留さぁん」 と声をあげた。  バタバタっと奥で物音がしたかと思うと、ころっとした体型の中年女性がどすどすと床に踏み板を突き破りそうな迫力で駆け出てきた。 「あっ。桜亮さま、おかえりなさいませ」  三和土(と呼ぶのは正しくない気がしたが)に立つ桜亮を目にするなり体を床に額を擦り付けへへぇーっと平伏する。まるで何かの変異で大きくなりすぎたダンゴムシのようなその出迎えにゆかりはすっかり面食らってしまった。
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