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「あぁ咲良、起きて待っていてくれたんだね。おばあさまが寄越してくださった、ほら、こちら、香月さんだよ」  ソファ横に片膝ついた桜亮が甲斐甲斐しく世話を焼き、体を起こした女性の背中にすかさずクッションを差し込む。それをぼんやりみていたゆかりは、彼女が顔をこちらに向けた瞬間、 ——! ……息が止まるかと思った。 こんな衝撃を一日に二回も味わうハメになるなんて、今日は一体、なんて日なんだろう! (さやかさん……? いや違う! 違うけど) 顔立ちは決して似ていない。なのに、見誤ったのは何故か。咲良と呼ばれた目の前の女性をゆかりは観察した。線の細さと透き通るように薄い肌色。蜻蛉に似たはかない存在感に、前に尚人の部屋で見た写真に映るさやかが重なった。そうか。雰囲気が似ているのだ。  あまりの衝撃にくらりと眩暈がした。  ふらつきその場に尻餅をついたゆかりの耳に、 「おいっ、大丈夫か」 と桜亮の慌てている声が他所ごとのように聞こえる。 「だ、大丈夫でございますか」 目を開けると、留さんと呼ばれた中年女性が鼻先が触れ合いそうな至近距離で覗き込んでいたので思わず「きゃっ」と声をあげそうになった。
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