頼ること

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頼ること

「お姉ちゃん、電話の途中で返事しなくなったから慌ててお父さんと来たの、そしたら部屋の鍵が空いていて、倒れていたからびっくりしたよ」 「あ、そっか、そうだった…」 「歩美に、お姉ちゃんが大変だ!って言われた時は焦ったよ。でも、意識が戻ってよかった。これから病院に行こう、タクシー呼ぶから」 「そんな、これくらい寝てれば治るから。迷惑かけちゃって…」 私は立ちあがろうとして、おっとっととまた倒れ込んで三木に抱きかかえられた。 「お姉ちゃん、迷惑なら来てないよ。友達なんだから当たり前だよ、ね?お父さん?」 「うん、頼る方は申し訳ないと思うかもしれないが、頼られる方はうれしかったりするんだよ、だから、ほら」 肩を差し出されるけれど、甘えてしまってもいいのだろうか? 「そうか、おんぶだよお父さん、おんぶ」 私が躊躇っていると、歩美が勘違いをしたようだ。 「あ、そんな、肩を貸してもらえば…」 「いや、気づかなくてごめん、遠慮しないで乗っかって。千尋ちゃんくらいおんぶできるから、ね。歩美はバッグを持ってあげて」 「うん、先に行ってタクシー停めるね」 私が返事をする前に、2人でさっさと手筈を整えてしまう。さすが親子だ、息があってるなぁなんて考えてたけど。実際、立ち上がってみたけどふらついて歩けそうにない。 「ほら、乗って」 腰を下ろして私が乗っかるのを待ってる人。 「すみません…」 私はそっと、三木の背中におんぶされた。 「よし、捕まってて。立ち上がるよ」 そう言ってゆっくりと立ち上がる。三木の頭の横から見える景色は、いつもと少し違った。 _____お父さんにおんぶされたら、きっとこんな感じだったのかなぁ… 会ったこともない、誰かもわからない父親のことを想像する。 それからタクシーで、緊急外来のある病院に連れて行ってくれた。 「過労か過度のストレスでしょう」 解熱剤と栄養剤の点滴をして、帰れるらしい。 処置室に寝かされて、ぽとりぽとりと落ちてくる点滴を見ていた。 足元には三木親子が座って待っていてくれる。家族でもない私をこうやって心配してくれて、付き添ってくれる人がいるということが薬よりも私の体調を回復させてくれているような気がした。 1時間ほどして、帰宅することができた。帰りは三木に肩を貸してもらって歩けた。 私のワンルームに帰り着くと、三木は外へ出て行った。
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