bull shit

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ーーーーガシャ、ガシャッ、ガシャッーーーー 背後からは甲冑で歩みを進めるあの独特な音が近付いてきた、外にいる怪物 でない事は明らかだったがまだあの天使が脅威ではないとはかぎらなかった 隆は拘束しておくべきだったと今頃に思ったが身体は固まり、音のする方向に 振り向く事すら出来なかった 隆はうつむき目をつぶった、また手足が震え始めていた 武士や侍ではないのだ死の覚悟など出来ているわけもない、叫びながらこの場を 逃げ出したいが頼みの足は言う事を聞かない、座っていた自分を恨んだ もうダメだ終わりだ、隆のカーゴパンツを生暖かい物が濡らす 頬を意味のわからない涙がつたった・・・ しかしその天使は隆の横に来ると同じ様に座り込んだ、そして腰に掛かる剣を 外し自分の傍らに置くと掌でブルーシート越しに遺体を触ると聞いた事のない 言葉をささやく、なにかの呪文だろうか隆はつぶっていた片目を開き横目で 彼女を恐る恐る見た、彼女はうつむき目をつぶりブツブツと呪文のような言葉を 呟いていた、そしてその目から一筋の涙がこぼれ落ちた 彼女は目を開くと立ち上がりフッーと大きく息をつき隆の方を向いた 傍らに置いた剣を腰に戻すと急に彼女の神妙な面持ちは何か血の気が引いてゆく そんな表情に変わり辺りをキョロキョロ見回し始めた いつの間にか恐怖に硬直していた身体も弛緩して隆も何事かと一緒に見回した 彼女は辺りを歩き回り始めると物陰や荷物の上をしきりに何か探している様子 で最初隆は彼女が何を探しているのか検討も付かなかったが探し回る間 終始、彼女が鞘をさすっているのに気付くと答えはすぐ分かった その鞘から伸びているはずの柄がなかったのだ、あの時の分析と考察をしてみた 彼女はあの動物に騎乗して怪物と剣を振るい戦っていたのであろう そして隆の乗るリフトの前に飛び出して来ると動物は爪に突き刺さり 彼女は投げ出されマストに引っかかる、そしてその時持っていた剣は・・・ 隆は記憶が曖昧だった、正直、ほぼ記憶がない、あの時彼女の手には剣が 握られていたのか、それとも投げ出された時あの場で落としてしまったのか 落としているなら多分詰所の辺りではあろうが今、丸腰で出ていって 『ちょっと剣を拾わせて頂いてその後、戦闘再開で』とはいかないだろう もし運よく剣が拾えたとしても、あの屈強な連中に彼女が単独で挑んで 果たして勝てるのであろうか、しかし今、隆と彼女は鉄壁の『三共倉庫』内に いる、剣よりも頼りになりそして何よりも隆も彼女の身も安全だった このままやり過ごせば時間が解決してくれるだろうと隆は考えた
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