bull shit

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エレベーターで8階へ到着すると隆は驚き我慢していたものが少しでた 扉が開くと彼女が待ち構え急に抱きついてきたのだ、隆は反射的に腰を引いた なぜだ、寂しかったとでも言うのか、しかしその理由はすぐ分かった 彼女は早く渡せと言わんばかりに手を出してきた、ここで更になぜだだった なぜ彼女は剣が戻ってきたのがわかったのだろうか、エレベーターが 上がってくれば表示灯でわかるのは当然だがそれを彼女が知るわけもない 彼女はさっきエレベーターを死ぬほど嫌がった、エレベーターの仕組どころか エレベーターそのものを知らないのだ、言葉が通じればそれもわかるのだが 隆はすっと剣を彼女に渡した、彼女はそれを受け取ると上にかかげ続けて 胸に当てるとそれを鞘へ収めた、ここで改めて隆に抱きついてきた 感謝の気持ちだろう、そう隆は汲み取った 隆は生まれて初めて味わうような達成感に満ち、それと同時にどっと疲れが 全身を包むと談話室のソファーにへたり込んだ、彼女は一度は鞘に収めた剣を 抜くと型か何かだろうか剣を振るっていた、隆は横になりながらその姿を 眺めていた、空を切る剣先からシュシュと気持ちのいい音がする隆は少し 眠くなってきた、もう終業の時間も近いはず、そう言えばあの後入庫予定の トラックはどうなったのだろうか、まぁ市内はパニック状態だ来るはずもないか そう思いながらふっと我に返った、隆の給与は日給だ働いてナンボの月給という 甘えた金ではなかった、もししばらく三共倉庫が休みとなれば隆は肩を落とす 彼女が近付き何か語りかけてきた、隆は死んだ目で笑顔を返す すると彼女は先程とは逆に隆の手を取ると奥に連れて行き自販機の前で しきりに何か言ってきた、多分オレンジジュースを欲しがっているのだろうと 隆は小銭を出すとオレンジジュースのボタンを押した、ガチャンとカップが 降りてくる、彼女は取り出し口を興味深げに覗いていた ザッーザッーと氷がカップに収まるとオレンジシロップと希釈の水がノズルから 注がれそれがカップの中で混ざるとアラームがなり扉が自動で開いた 彼女は隆を見た、軽く頷くとそれが通じたのか恐る恐る取り出し口に手を入れると オレンジジュースを取り出した、彼女は又、カップを頬に当てると笑顔になった 涼し気で冷たい感じのその顔が子供のように屈託のない笑顔に崩れる、これが ギャップ萌えと言うやつかと飯塚さんを思い出し考えていた 彼女は剣も戻り、この世界のお気に入りのオレンジジュースを手に入れた今、 隆の存在など気にもせず椅子に座ると何やら呟きながらオレンジジュースを嗜んだ 隆も彼女の正面に座ると背もたれに寄り掛かり天井を仰いだ、ここで重要な事を 思い出した隆は席を立つと厨房へ向かった、空腹を満たす為と彼女の真の美しさを 取り戻す為に顔を拭いてあげたかったのだった
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