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リフトのデジタル時計は21:45を指していた
隆は6台の大型トラックの荷降ろしを終えひと時の休息に浸っていた
脚を前に投げ出しそう広くもないリフトの椅子に深く座るとタバコに火をつけた
この三共倉庫は先程も言った通り構内禁煙である、もしその違反が見つかれば
非正規雇用の隆などは即、出入り禁止ではあるが『ライトスタッフ』12年の
弛まぬ努力の結晶、いや数しれない犠牲の元と言うかこの場所は所謂『死角』
だった、構内に数台ある監視カメラの死角にあたる唯一の場所
詰所へ戻ればなんのリスクもなく喫煙を行えるのだが、12年間の諸先輩の方々が
発見したこの場所へ敬意を表し、いや隆はただ単にこの場所が好きだった
この場所でリフトに脚を投げ出し缶コーヒー片手にタバコを吸う、そして倉庫の
間を抜けてくる生暖かい潮の香りがする風、この仕事いや、昨今の生活の中
で唯一の楽しみと言えた
辺りに気をやると流石にこの時間帯になると静寂に包まれ、少し冷えてきたせいか
軽くモヤが立ち込み始めて尚更にゴーストタウンの雰囲気を醸し出してきた
携帯を少しいじっていた隆であったが疲れのせいか少しウトウトしはじめ、次の
トラックが到着する迄1時間半ほど、ちょっと仮眠でもと狭いシートに更に身体を
折り畳み眠りの世界へ落ちていった
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