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5 魔法使いは告白する
「先ずは貴女に謝罪を──礼を欠いた出会い。本当にすまなかった」
と、まず一言目に懺悔の旨を伝えて頭を下げた。
まさか出会い頭にお辞儀と
自責の念に苛まれたごめんなさいをされるとは思わず。
何と答えようかで頭が一杯一杯になったわたしは
「……えっ!……えっ?」
……と、暫く狼狽え続けていた。
最初の頃と違い、落ち着いた様子でドゥーさんは全て語り、わたしは目を丸くした。
ある日、貴族であるドゥーさんは魔物に襲われていた人を
通りすがりで助けた。
相手は思ったよりも強く、
戦い何とか倒したものの深い傷を受けてしまったという。その傷はどうも特殊なものであったようで、酷く治り辛い。
何せ、あらゆる店の物を試してもなかなか治りそうになかったのだから。
もうどうしようもないのか。そう絶望している時に、執事さんがある物を持ってきた。
それは助けた人から後日、礼にと送られ届いた品。
わたしの店から購入した魔法薬だ。
わざわざ購入して贈ってくれて有り難いと感謝を込めながら使ってみると、驚く程あっという間に治ってしまったらしい。
魔法薬の調合は、流通している基本的なレシピを使うか。
本人独自のアレンジや配合で行う。
わたしオリジナルの薬は、偶然か必然か兎に角その傷に対して劇的な効果を発揮した。
その効能に命を救われたと
感謝感激で感極まったドゥーさんは魔法薬を贈った人に御礼を述べ、喜びのあまり調合した店へと突撃。
一目見て思わず告白してしまったらしい。
……勢いとは凄いものである。
後に頭が冷え、冷静になってから自分がしたことに頭を抱えて落ち込み。
頭を下げるべきであると判断したのが今朝のことである。
……というのをドゥーさんがしっかり説明してくれた。
どうしてわたしなのか。
そう悶々と悩み続けていた疑問が解けて胸のつかえが取れた気分である。
「あの日の君への言葉は誓って嘘ではない。だが、あの日あの時の行動は君のことを考えず
無遠慮極まりなかったと恥じている。落ち着いてから、後悔の念をいだく程だ。迷惑であれば断ってくれて構わない」
そう言って、また真っ直ぐ
過ぎる瞳がわたしを捉えた。
ドゥーさんは凄く良い人だ。だって一度も恋人になるとも、恋人になれとも強制してこなかったんだもの。
あの出会いはいきなりで驚いたけど、気持ちは本当に嬉しかった。
だから──────。
「──それで、返事はどうしましたの?」
いの一番に伝えたかったキリエと共にお茶会をしている。
連絡した途端にまた瞬速で
現れ。
『あ、あ、あのあの。わ、わ、わたしっ!』
そんな風に興奮冷めずわたわたしているわたしを落ち着かせる為のリラックスするお茶とお菓子を用意してくれた。
お茶もお菓子もとびきり良いハーブを使っていた。
鼻で香りを楽しんでも、口にいれても心地良さが身体中を
通り抜けて心を宥めてくれている。
「あ、あのね。わたしからの
返事は、待っててってことで
納得してもらったの。
『わたしはわたしのお店でしたいことがあります。だから今は付き合えません。でも、一通りすべき事を終えたら、わたしは貴方と共にいたいです』って気持ちをちゃんと伝えて言ったら
『分かりました。では、その時が来る日を楽しみにしています』
って、にっこり微笑んで了承してくれたの。ドゥーさんって優しいなぁ~」
嬉しくて、えへへ~と口から笑みが自然に溢れてしまった。
「あらあら、それは一体全体どれだけ途方も無い時間を掛けて殿方をやきもきさせるのかしら? ジョマも罪作りですわねぇ~~~」
ニヤニヤとした笑みに悪意は無い。からかっている。
嫌悪はないけど、ちょっとだけ意地悪だと頬を膨らませて抗議する。
「そ、そこまで時間はかけないよっ!!」
今は、人生で一番楽しい。
一番が変わる未来の為に頑張ろう。
ジョマは、そう決意した。
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