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4 魔法使いの悩み事
何時もより早く目が覚めた。睡眠時間は少ないのに、意識はこれ以上なく、はっきりしている。
それはそうだろう。
だって今日は運命の日────と言うのはあまりにも大袈裟過ぎるけど、ドゥーさんにわたしの気持ちを伝える日。
だから、毎朝行なっている行動が何時もより更に丁寧になって、知らず知らずの内に時間をかけてしまっている。
それは薄桃色の髪を櫛でとかし、どのリボンを結ぶか迷うことだったり。
クローゼットを開けて、どの服を着るか選ぶことだったり。
現実逃避している訳ではなく、返事を考え過ぎてしまわないようにする無意識からの
行動……だと思いたい。
「この髪型、おかしくないよね……?」
鏡へ呟く確認が両手の指を超えた。
髪型の確認が済むと、目が自然と顔を見てしまう。
鏡面に映る顔は女神様のように美しい訳でも、目を背けたくなる程に耐え難い不細工でもない。
いつも通りの平凡で変わり映えのない至って普通の顔が映っているだけ。
市民の雑踏に混ざってしまえば埋もれてしまう、マンドラゴラの背比べ。
もう少し、オシャレに興味を持てば良かったのか──。
「──ハッ!いけない、いけない」
後ろ向きな思考につられて暗い表情になっていた。
これでは駄目だと慌てて微笑む。
卑下はよくないと分かっていても、ついつい思い浮かべてしまうのは悪い癖だ。
それでも、思ってしまう。
(……どうして、わたしなんだろう?)
なんで?どうして?
そう自らに問い掛けても答えなんか出ないのに、疑問だけがぐるぐるぐるぐる終わりなく回り続ける。
まるでそれは、自らの尾を追い掛ける犬のよう。目を回すのが先か、それとも疲れ果てるのが先か。
ドゥーさんに聞けばいいだけなのに、どうしても気になって考え込んでしまう。
そんな終わりの無い思考の回転に待ったをかけるような扉の開閉を告げるベルの音が明るい金属音を鳴らした。
(……来た!)
今度は、ちゃんと言うんだ。
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