第2章 Case 1

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Case 1ー4  部屋に運び込まれたホワイトボードの前に、ユキは立つ。  皆が見守る中、鬼海の言葉を文字に起こしていく。  無心に。  ひたすら無心に。  いつのまにかユキはペンを握る指の関節が、白く浮き上がるほどに力を入れていたことに気付き、努めて肩の力を抜こうとする。    対象者:  箱崎 ひな 10歳、身長132センチ。  家族構成:  父、母、弟  身体的特徴:  左眼下に目立つ黒子あり  服装:  制服(白い長袖ポロシャツ、紺色の吊付きプリーツスカート、紺色の帽子) 水色のランドセル、白いソックス、ピンク色の運動靴  失踪場所:  コンビニの駐車場付近    失踪日時:  3月15日 金曜日 15時30分過ぎ    今のところ、公にされている情報はこれだけである。  ホワイトボードに書かれた文字をいくら凝視したところで、ひとりでに消えて新たな言葉が浮かび上がるわけでもないのに皆はそこから目を離せないでいた。 「相も変わらず、ぺらっぺらだな」  情報の少なさに、倉部が唇の端を歪ませながら毒吐どくつく。  おもむろに鬼海はユキからペンを奪うと、 ホワイトボードに書き足しはじめる。  失踪場所:  コンビニ駐車場付近→歩道上の水溜り 「……書いちゃっていいんじゃないですかね? もうこれ確定でしょ」 「……だな」 「ですね」  緊張感を含んだ倉部とユキの言葉が重なる。龍之介が目元に興味深げな色を浮かべて、三人を交互に見た。  そのときだ。  部屋の温度が変わったような気さえした。 「今回は、間違いなく救えるはずだ。時間もまだ浅い。『入り口』も特定出来ている。だから、救える。……だよな?」 「……救いたいです」  ユキは倉部と鬼海が改めて表情を引き締める様子を見て、掌に爪が食い込むほど強く拳を握り締めた。  龍之介は静かに、だがしっかりと、その光景を目に焼き付けるかのように、その場に佇んでいた。  
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