第九話 いよいよ大詰め、文化祭イベント

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 先輩はステージを見て、苦笑する。 「西条がどうしてもってな」  ミスコンの企画は、実は、主人公から持ち込まれたものだった。  最初は渋々だったのに、出場者名簿を見た途端、会長と会計が俄然やる気を見せ始めたらしい。  企画を練り上げ、本格的にステージを作り上げて。  予算を大幅に超えた分は、二人のポケットマネーから出されたそうだ。 「あれがやりたかったんだろうな」 「はぁ、でしょうね」  二組が優雅に、颯爽と、ランウェイを歩いていく。  花道の先端に立ったとき、俺みたく口をぽかんと開けて圧倒されていた主人公は、生徒会長に隅に追いやられていた。  それから、会長と会計はお互いの恋人を紹介するように腰を抱き、二組はキスをした。  一組は最初っからキスしてたけどね。  スポットライトを浴びて、周り中が叫んで、耳が痛いくらいにうるさい。 「な、なんだよ、それ?! 俺を無視すんなよ!!」  主人公が叫んでるけど、もう誰も見ていない。 「良かったなぁ、加賀谷」  加賀谷が顔を真っ赤にして、でも、幸せそうなので、俺も涙腺が緩んでしまう。    涙を溜めて見ていると、先輩の手がそっと俺の手を繋いだ。  見上げると、 「お前が出場してたら、俺もあれくらいしたぞ」  薄暗くなっていく夕闇の中、先輩の顔が近寄って、俺達もキスをした。  ステージ脇から、係の腕章をはめた副会長と双子庶務が主人公を回収しているのが見えた。 「玲! ひどいんだ、俺の見せ場をあいつら!」 「見せ場? 見せ場ってなんです」 「玲?」 「私に偽りは良くないって言っておいてそれですか」 「自分の容姿が嫌いって言ってたよね」 「どこが? 見せびらかしてるじゃん」   「ち、ちがっ」  主人公は、副会長と双子庶務に縋ったけど。  冷たく踵を返されて、その場に崩れ落ちていた。
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