第九話 いよいよ大詰め、文化祭イベント

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 ヒールに転びそうだったり、運動部の逞しい体にドレスが似合ってなかったり。  笑いや歓声が上がって、なかなかに盛り上がっている。 「あれ?!」  すごい美少女が登場した。  淡い茶色のふわふわした髪に、大きな瞳と赤く小さな唇。  メイクを差し引いても、可愛い綺麗な顔立ちって言うのがよく分かる。  軽快な音楽と裏腹に、辺りはざわついて「誰?」「すごい美少女」って、口々に言い合ってるのが聞こえてくる。  けど。  俺は知ってる。  これは、カツラと瓶底眼鏡を取った主人公、渋谷あおいの真の姿なんだ。  渋谷の名前が紹介されて、どよめきが起こる。 「うっそだろ?!」 「あれ、渋谷?!」  それらをゆっくりと見渡して、反応に満足した顔で渋谷あおいは悠然とランウェイを歩き始めた。  まるで、物語のヒロインだ、王女様だ。  いや、主人公だから、間違いはないんだけど。  でも、主人公は、敢えて容貌を隠していたはずなんだ。  幼い頃から天使みたいだったけど、男らしい性格をからかわれるのがずっとコンプレックスだったんだ。  でも、持ち前の明るさと強さで乗り越えていく。  そういうところに、攻略対象者達も惹かれていく筈だったのに。  あんな、自慢げな顔で。  自分を見せびらかすように歩いていくのは、違うんじゃないか?
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