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「狸の世話してて」
「へ? たぬき?」
ぽつりと先輩が言うから、聞き返してしまった。
斎木先輩が言うには。
山菜を取りに藪に行ったら、仔狸が怪我をしているのを見つけて、駄目だと知りつつ治療してやったらしい。
母狸とはぐれたのか、餌も持ってきてやっているそうだ。
「へぇぇ」
「あー、うん。駄目だよな、野生だし。分かってるんだけど」
「可愛いでしょうねぇ」
「動物好きか?」
「はい。親がアレルギーで飼ったことはないんですけど」
小さいモフモフしたのは好きです。
そうか、と斎木先輩が微笑む。
先輩も面倒見るってことは動物好きなんだな。
でも、そんな設定、あったっけ?
「あそこ、茸取れるんですか?」
斎木先輩が言うには、なかなかに食材の宝庫らしい。
実は、生徒の立入禁止区域なので黙っててくれないか、とイケメンが神妙に言うから。
「いいですよ。今度、狸見せてくださいね。そしたら、俺も同罪です」
俺は笑って言った。
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