1話 序章

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「神様は平等にしてくれない」という人が居るけど、私は思わない。 そんなの気の持ちようだ。 現実が辛いなら努力すればいいだけの話で、何も努力をしないうちから神様に言ったって負け犬の遠吠えにしか聞こえない。 私の家庭環境を聞いたら「かわいそう」と言う人がほとんどだけれど、私はそう思っていない。 私は自分なりに努力をしている。 …努力してきたんだ。 「はぁ…ここで最後」 汗を拭きながら自転車を降り、籠の中から新聞を取り出す。 『おはよう!明里(あかり)ちゃん。牛乳飲むかい?』 「あっ、泰造さん!飲みたいです。ありがとうございます」 早朝の新聞配達。自宅から自転車で行ける範囲にしてもらい、時々外で体操をしている町内の堀内泰造さんと話すようになった。 たまにこうして牛乳や麦茶をくれる。 泰造さんからビンに入った牛乳を受け取ると、その場で飲んだ。
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