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「着いた…ここだ」
ある家の前に立って、そう呟いた。
迷わずチャイムを押すと、『ハイ』と声が聞こえた。
良かった、居てくれて。
「あの…前に隣りに住んでいた森下明里です」
『あ、明里ちゃん!?まぁ、まぁ、今開けるわね』
声が途切れるとすぐにドアが開いて、一人のおばさんが出てきた。
『まぁ、明里ちゃん!!こんなに大きくなって!!どうしたの?』
「お久しぶりです、津田さん。あの、お話したい事があって」
私がそう言うと、『大丈夫よ、寒かったでしょう。入って?』と家の中に入れてくれた。
『座って?今、お茶入れるわね』
「あ、すみません。あと、これ…どうぞ」
と差し出したのは、津田さんが前に食べていたお煎餅の詰め合わせだ。
『あら、まぁ、ありがとう。私、煎餅好きだからね』
津田さんはニコニコして台所へ向かった。
私は居間に入り、座布団の上に座った。
津田佳子さん。
私が小さかった頃、隣りに住んでいて色々お世話になったのだ。
あの事情も。
今聞けば教えてくれるだろう。
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