3話 原因

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「着いた…ここだ」 ある家の前に立って、そう呟いた。 迷わずチャイムを押すと、『ハイ』と声が聞こえた。 良かった、居てくれて。 「あの…前に隣りに住んでいた森下明里です」 『あ、明里ちゃん!?まぁ、まぁ、今開けるわね』 声が途切れるとすぐにドアが開いて、一人のおばさんが出てきた。 『まぁ、明里ちゃん!!こんなに大きくなって!!どうしたの?』 「お久しぶりです、津田さん。あの、お話したい事があって」 私がそう言うと、『大丈夫よ、寒かったでしょう。入って?』と家の中に入れてくれた。 『座って?今、お茶入れるわね』 「あ、すみません。あと、これ…どうぞ」 と差し出したのは、津田さんが前に食べていたお煎餅の詰め合わせだ。 『あら、まぁ、ありがとう。私、煎餅好きだからね』 津田さんはニコニコして台所へ向かった。 私は居間に入り、座布団の上に座った。 津田佳子さん。 私が小さかった頃、隣りに住んでいて色々お世話になったのだ。 あの事情も。 今聞けば教えてくれるだろう。
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