ペットカー

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その車体にはペットカーと記されていた。その車体にはペットカーと記されていた。見渡す限りスクラップの山。屋根が落ちた廃工場。その脇に朽ちるように停まっている。古いボンネットバスにキャンピングカーがついている。列車のような編成のこの車。当然人影はない。崩れかけた中に入ると奇妙だ。鳥籠や水槽や小動物の檻などまるで移動ペット販売でもしていたような内装だ。ペットカー。この車は武装している。運転席にはヘッドアップディスプレイがついている。この車は何なのだ。 車の周りにある不思議なものに気付いたかもしれません。どうやらドライバーは一人ではないようでした。車内は数匹の小さなネズミに占拠されている。車内には全く見当たらないことから、これらの動物は外から持ち込まれたものと思われる。そのうちの1匹のネズミが窓から見えた。中にはネズミがいた。車内には鳥かごが置かれていた。中央には小動物用の小さなケージがあった。色とりどりの旗と花で飾られていたのが印象的だった。また、車内には人間が活動した痕跡があった。窓には紙が貼られていた。車の中にはドライバーの姿はなかった。まるで一人で運転しているかのようだ。もし、この車を本当に運転していたとしたら、中には誰もいないはずだ。これは、オーナーがドライバーに何かメッセージを残していたのだろう。この車はペットの車でもある。飼い主は現れなかった。人の気配がするのは、すべてわざとらしい。 車内は、どうやって通ったのか、天井には穴や階段があった。そして床にも扉や窓が開けた跡のある。車内にはドアがあった。それは全て閉められ、もう閉じられている。恐らくこの車は、閉め忘れであったに違いない。ここにある何もかもを閉ざされてしまったようである。扉や窓が開けられたのはこれまでで一度だってかかわっていない。このような感じで、ある程度の情報を収集するための場所を探していたのだと思われる。おそらく、この車はもう運転されないだろうと見えた。この車は何だったのか?この車の中を覗いてみると、車そのものだった。窓から光が漏れているが、どうやら、目を閉じられているらしい。そうしておけば、誰かが外に連れ出してくれる、そんな気持ちを感じた。 ふと、扉のすぐ外にある車両の窓が開けられていることに気づいた。そこには明かりがついていた。光の中に目が焼き付く。しかし何をしている訳でもない。開けられた窓には、顔があった。人間だ。その人間が窓から顔を出していた。私は思わず、その人間を見た。人間の手にはペットが乗っていない。手を持ち上げられて、こちらへ近づいている。その人間はペットではない。その人間は私を見て何かを言っている。すると、人間の背後から扉が開けられた。私に気がつく。 「私が何をしているのか分かる?」 声だ。人間の声だ。 「私はね、あなたのペット。あなたにはペットになってほしかったの。もし、ペットでなかったら私のペットにしてほしかったの。あなたはペットになれと言われたのよ。でも、あなたはペットではないのよ。あなたは自分の命をペットでなくしているのよ」 人間が私に近づく。人間の肩にある黒く輝いている翼は、私が見えていなかったのだ。人間が私の頬に触った。人間に触れられた私の頬はその黒い翼に触れられた瞬間痛みを感じた。そうだ、こんなに痛いはずなのだ。 「あなたは本当にペットと言うべきのか?私をペットにして」 人間は私の耳の先を食いちぎり、首を噛みちぎろうとした。痛い痛い痛い、痛い痛い痛い。 私の心の奥から何かがせり上がり、涙が溢れた。どうして? 「ごめんのーね。ペットにならなければよかったのに。本当に馬鹿だわ」 人間は私の体が動かせないように羽を大きく広げて人間の体に覆いかぶさったのだ。首がもげそうになるくらい痛い。 人間は羽をはためかせて人間の顔を私に突きつけた。目を大きく見開いている人間。そんな人間に私が何が起きたのかを聞く。人間はそれでも、私の質問には答えず、私の顔を噛もうとした手を止めさせてそのまま人間に目を向ける。そして、人間は最後の力を振り絞り、私に言った。 「あなたは死んでよ」 人間は私を飲みこみながら去ってしまった。その人間が着ている服は人間の体が消えていき、その背中は闇に消えていった。 そうだ、私はペットだ。私は私。それが唯一ある私を見つけた。ペットカーとは何か。その正体が定義できなくても、私の立場と距離感を位置づけることはできる。ペットカーとは私にとって 一体どんな存在なのだろうか。それを考えながら、私のペットとしての人生が始まったのだ。ペットカーに乗車する。この不思議な世界へと誘われるように車に乗り込み旅をするのだ。これからの日々、私の目にはどのような風景が映し出されるのだろうか……。それは誰にもわからない。 おわりに、ここで述べてきたような事実関係に誤りがないとすれば、これは私という存在とペットとの関係について書いた小説であると言えるでしょう。しかし、私は、この物語は、物語であってフィクションですと言ってしまってよいのだろうか。それさえも分かりません。 では、次の作品を読みにいきましょう。また、会う日まで……』 *この文章を書いている時、ちょうどペットを飼っていましたが、もう死んでいるのです。今はただ、この子達のために祈ろうと思います。この小説の中でペットが死んだ時に、私は自分のことのように悲しい気持ちになりました。きっと、この作品を見ている方はもっと共感されていることでしょう。このペット達は本当にかわいそうな動物でした。しかし、生きているうちに楽しいこともたくさん経験できたはずなのです。この話は現実に起きたこととは全く違う架空の物語だと私は思いたいのです。どうか信じないで下さい、私の空想でしかないのだと思っていて下さい。私のペットたちはもう天国に行ってしまい、私のことを待っているのかもしれないのです。私の住んでいる場所は北海道にある小さな街でした。そこには、とても美しい自然があり、人々はその自然に感動を覚えていた。街の真ん中には山があったのだが、そこに洞窟があった。その入り口はとても小さかったのだけど、中は結構広いらしい。地元の人達はそこのことを、秘密の広場と呼んでいた。なぜそう呼ぶようになったのか、それは誰も知らない。いつ頃からその名前になったのか。その洞窟の中に秘密の場所があった。その場所には、その土地の人々がお墓を作っていたのだ。その秘密の場所に行くには山の頂上から入る。そこは小さな公園になっているらしくて、そこから少し歩くと森に入る。森の中には小道があって、その先には洞窟がある。その洞窟は、大人でも簡単に入れるほどの大きさだったけど、その洞窟の中には何もなかったのだ。ただ、壁に沿って螺旋階段が作られていて、その螺旋階段を登ると、天井まで行くことができるのだ。その天井から太陽の光が差し込む。その光を浴びると、とても気持ちがいいのだ。私は、その秘密の場所が大好きだった。 ある時、私の親友が、その秘密の場所に連れて行ってくれた。彼女は、その場所が、特別な場所だということを知っていた。だから、私に教えてくれたのだ。そして、親友は私に教えてくれた。 「桜切る悪党、梅を切らぬ愚者…」 トーンスケルチを調整すると空電ノイズが消えた。SSB変調特有の鼻声が自称「作家」の自分語りを2mバンド帯に垂れ流している。 戦闘指揮所(コマンドポスト)がさわつく。 「試作特車Xを発見しました」 「場所はどこだ。準天頂衛星が撃墜された。こちらからは特定できない」 「待ってください。そればやばいっすね。軌道衛星攻撃機能(アサット)までフル装備とは予想外でしたよ。発見地点はええと美…ザザッ」 「F3どうした? 美? 美唄市でいいんだな?」 ステルス戦闘爆撃機の墜落を受けて国家安全保障会議は色めき立った。 美唄市は北海道南部に位置し、石狩平野のほぼ中央に位置する人口四十万人を擁する地方都市だ。 日本最大の炭鉱都市として栄えてきたが、現在は閉山して人口は減少の一途を辿っている。 しかし、今はそんなことは関係ない。重要なのは、現在進行形で日本の防空システムの根幹を担う最重要施設の一つである人工衛星を打ち落とせるほどの兵器を保有していることだった。 それが本当ならば、もはや戦略核を超える世界の脅威と言っても過言ではないからだ。 ただ、それだけではない この国は他にも様々な脅威に晒されているのであった…… ------ そもそも哲学的ゾンビに完全運転自動化車両(レベルファイブカー)を乗っ取られた時点で状況は「詰み」だった。 高度人工知能による超AI制御。それがこの国の軍事運用思想である。 人間に代わって自律型ロボットが戦争を遂行するという狂気の論理は、しかし現実のものとなりつつあった。 国防高等研究所(NARACISTIC EDEN)が生み出した、次世代型自動軍隊(JADE―G)と呼ばれるそれは既に半世紀以上、稼働してきた実績がある。 しかし、今回の作戦が成功してしまった。試作車両XはJADE―Gの最終形態だ。兵員輸送車の居住性を究極レベルに高め移動式核シェルターとして使え、野戦病院機能に生物種子保存庫としての役割まで加えた。核の直撃に耐える「陸の箱舟」だ。さらに秘匿性を高めるために車体はペットの移動販売車に偽装している。内々で開発コード「ペットカー」と呼ばれていた。また哲学的ゾンビとは限りなく人間に近いアンドロイド兵士だ。そのボディは生体組織で出来ている。人間と同じように食事や睡眠をとり、血も汗も涙も流す。しかし体力、俊敏力などあらゆるパラメーターは成人の数十倍だ。骨格はハイスチール製で戦車の装甲すら素手で砕く。そんなバケモノがペットカーをハイジャックした。 哲学的ゾンビには女の人格がインストールされているらしい。もちろん兵器に性別など不要だ。調べてみたところ哲学的ゾンビを管理するサーバーに侵入痕跡があった。誰かが意図的に優しさをインストールしたのだ。精神的に軟弱な自律機械、もはや兵器として成立しない。これは開発中止を狙った工作だ。 それでペットカーが強奪された理由も理解できる。あの「女」は試作車両Xに内蔵されている生命の種子を「ペット」であると曲解し、それを護ろうという母性本能を働かせた。国家安全保障会議はそう結論付けた。 狂った母親は殲滅せねばならない。美唄市に向けて陸自の精鋭と特殊部隊が送り込まれた。 「もはや万策尽きた。彼女を焼き殺すしかあるまい」 防衛大臣は構想段階次々期主力先端装甲車両JADE―PとEMP弾を組み合わせた対人殺傷兵器によって、ペットカーを殲滅することを、国防高等研究所に提案した。国家安全保障会議で検討の末「神威一号作戦」が許可された。 EMPは原子核分裂反応を励起する電磁放射線を放つ特殊弾頭。つまり核爆弾の一種であるが、爆風や衝撃波として放出されるエネルギーの大半を電磁パルスに費やす。 美唄市周辺市町村に避難命令が出されEMP弾が炸裂した。「桜切る悪党、梅を切らぬ愚者。美唄市はねぇ…桜の北限なのよ。ほぉら、いい子ね。お花が満開だわ」正気を失った哲学的ゾンビは空っぽの鳥籠を撫でながら業火に焼かれていく。JADE-Pの一個自動車小隊にとってJADE-G1両は敵ではなかった。圧倒的な飽和攻撃でJADE-Gを防戦一方に追い込み隙をついて三沢基地所属のF3支援戦闘機がEMP弾を投下した。 こうして、美唄市は灰になった。 「なんつぅか、無茶苦茶だよなぁ」 作戦司令部(コマンドポスト)では作戦の成功を祝う宴会が開かれていた。 作戦立案者である情報幕僚長が音頭を取る。 「ええ、まったくです。我々には、もう彼女と戦う術がありません。これからは彼女の意志を汲み取って、彼女が望む平和な国を作っていくしかないでしょう。まあ、私はそれでもいいと思っていますよ。私達が生きている間にそんな日が来るかどうかは分かりませんがね」 「……そうだな」 「さて、乾杯の音頭をお願いします。総理」 「ああ、わかった。えー、本日の作戦の無事完了を祝して、乾杯!」 「「「「かんぱ~い!!」」 酒好きの自衛官たちは酒を酌み交わす。 しかし、この先も戦いは続くだろう。 なぜなら、この国はあまりにも多くの問題を抱えているからだ。 「この国の未来に幸多からんことを」 その言葉は、果たして誰に向けられたものなのか。 誰にも分からなかった。 「はっはっは! 俺様の勝ちだぜ」 男たちを見下ろす冷ややかな視線があった。それは決して安くはない値札に目を移し、憐みの色を浮かべた。 そして、少し考えなおし、こう言った。 「やっぱり包んでくれ。楽しいだけがプレゼントじゃない」
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