HOUSE

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「石?」 と独りごちる。てを覗いたヘレナが、 「それ石じゃないわ。歯の詰め物みたい」 と言ったので舌で口の中を確かめてみた。取れていない。 「取れてないよ」 「でも間違いないわ」 ヘレナは異物を見た。 「貸して」 彼女は異物をバスルームにある洗面台で洗った。何でこんな物がパテの中に入っているの?訝るヘレナの傍へ来てロバートは言った。 「この家、何か妙だと思わないか?」 「ロバート、あなたもそう思う?」 「ああ、薄気味悪い」 と吐き捨てた。 ふたりが振り返るとジェニファが真顔で立っていた。ヘレナもロバートもぎくり、とした。 「びっくりさせないで」 ヘレナは怒ったような口調で言った。 「心臓に悪いよジェニファ」 ロバートは苦笑した。 「ヘレナもロバートも神経質すぎるのよ」 含み笑いを浮かべ、ベットに戻って寝転がった。 ロバートは地図を広げ、この家がどの辺りにあるのか確かめた。 「この辺のはずだろう」 と地図を指し、 「家なんてないぞ」 と言ったロバートにジムが、 「その地図が間違っているのさ」 と欠伸をしながら言った。 「ちょっと見せて」 ヘレナが地図を取って確かめた。一瞬目が霞んだ。 「あるわ」 地図をロバートに向けた。おかしい。見落としたのだろうか?そんなはずはない。 「ふたりとも早く休めよ」 ジムに言われロバートとヘレナは横になった。悶々とした気分で天井を見つめるロバート。得体の知れない家に泊まる羽目になったのはジムのせいだ。 ジムが近道なんかしなければよかったんだ。その気持ちが苛立ちに変わった。 「ジム!きみのせいだからな!」 急に声を荒げた。眠りに就こうとしていたジムは、その声を聞いて眉尻を上げた。 「何だよ!?俺は眠いんだ!」
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