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「そっちのきみもかい?」
とヘレナの顔を見た。
「え、ええ。私も眠れなくて」
「そうかい」
オリバーは片手で彼らを払うような仕種をして、
「出て行くつもりだったんだろう。いいのか、仲間を置いて行って」
仲間?もはやジムもジェニファも仲間ではないと思っていた。
「まぁ俺には関係のないことだがね」
「そこで何をしているの?」
グロリアが現われ、荷物を持ったヘレナとロバートを見て、
「こんな夜中に帰るつもり?よした方がいいわよ。月の女神なんてあてにならないものよ」
と、にこやかに言うグロリアの笑みには、狂気が孕んでいた。
勢いでドアを開けヘレナは駆け出した。ロバートも続いた。白いワゴン車に乗り、キーを差し込みエンジンをかける。
「早く!」
助手席のヘレナは急いていた。ロバートも同じ気持ちだ。一刻も早くこの家から出て行きたい。
その様子をさも愉快そうに見ているオリバーとグロリアは、話をしている。
「どうせここからは出られっこないのになぁ。それとも俺らが奴らの代わりに出て行くか?」
「何を今更。私たちこの生活に馴染んでしまったじゃない」
やっとロバートとヘレナの乗った車が走り出した。家の門を抜けようとした瞬間、車が何かにぶつかった。
「どうしたの、ロバート!?」
「わからない!?」
再びアクセルを踏む。タイヤはシュル、シュル、と回り続けて砂煙が立つばかりで一向に前へ進まない。
「壁にぶちあたっているみたいだ」
「壁ですって!?」
しかし目の前に壁などないし、ヘッドライトが照らす先には道がある。
にもかかわらずそこを出ることができない。ヘレナはバックミラーを覗いた。
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