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「ジムが近道しようとしたせいで、こんな目に遭ったんだぞ!!」
「こんな目って何だよ!?キースさんたちは親切にしてくれてるじゃないか!」
「親切?どこが!?この家はな、」
ロバートが先を続けようとしたとき、ノックの音がした。
「みなさん起きてるかしら」
「どうぞ入って」
ジェニファが応えた。部屋に入って来たグロリア微笑みを浮かべロバートとヘレナを見つめた。その笑みは氷のように冷たかった。
「朝食の支度が出来ているの。一緒に食べましょう」
今度はジムとジェニファに向けて微笑んだ。その笑みの奥に、粘々と絡みつく気味の悪さが覗いた。
ジムとジェニファは軽快な足取りで階段を下りた。
「さあ、坐って」
ダイニングテーブルには焼き立てのパテが皿に乗っていた。ヘレナは匂いに顔をしかめた。臭い。古くなった肉を使っているのかしら?
昨晩と同じ料理にジェニファもジムも食欲が失せた。
「どうしたの?食べないの?」
と、すすめるグロリアに
「いくら俺でも朝からパテはちょっと」
と遠慮する。
「あなたは?」
ジェニファにもすすめる。
「私も結構です」
と断った。
オリバーは大量のパテを焼いていた。
「せっかくお前らのために作ってやったというのに、肉になった奴らに申し訳ないと思わんのか?」
〝肉になった奴ら〟とはどういう意味?若者たちは訝った。ロバートはダイニングルームに入ったときの違和感に気付いて吃驚した。
「そちらのふたりも召し上がらないの?」
グロリアがヘレナとロバートに訊く。
「私はベジタリアンなんです」
「それは残念ね。あなたも?」
「ええ」
「困ったなぁ。うちには肉しかないものでね」
オリバーは片頬を歪めた。
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