HOUSE

15/68
前へ
/68ページ
次へ
「ジムが近道しようとしたせいで、こんな目に遭ったんだぞ!!」 「こんな目って何だよ!?キースさんたちは親切にしてくれてるじゃないか!」 「親切?どこが!?この家はな、」 ロバートが先を続けようとしたとき、ノックの音がした。 「みなさん起きてるかしら」 「どうぞ入って」 ジェニファが応えた。部屋に入って来たグロリア微笑みを浮かべロバートとヘレナを見つめた。その笑みは氷のように冷たかった。 「朝食の支度が出来ているの。一緒に食べましょう」 今度はジムとジェニファに向けて微笑んだ。その笑みの奥に、粘々と絡みつく気味の悪さが覗いた。 ジムとジェニファは軽快な足取りで階段を下りた。 「さあ、坐って」 ダイニングテーブルには焼き立てのパテが皿に乗っていた。ヘレナは匂いに顔をしかめた。臭い。古くなった肉を使っているのかしら? 昨晩と同じ料理にジェニファもジムも食欲が失せた。 「どうしたの?食べないの?」 と、すすめるグロリアに 「いくら俺でも朝からパテはちょっと」 と遠慮する。 「あなたは?」 ジェニファにもすすめる。 「私も結構です」 と断った。 オリバーは大量のパテを焼いていた。 「せっかくお前らのために作ってやったというのに、肉になった奴らに申し訳ないと思わんのか?」 〝肉になった奴ら〟とはどういう意味?若者たちは訝った。ロバートはダイニングルームに入ったときの違和感に気付いて吃驚した。 「そちらのふたりも召し上がらないの?」 グロリアがヘレナとロバートに訊く。 「私はベジタリアンなんです」 「それは残念ね。あなたも?」 「ええ」 「困ったなぁ。うちには肉しかないものでね」 オリバーは片頬を歪めた。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加